眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【眼鏡堂書店の本棚】ナチスがUFOを造っていた/矢追純一

眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。

今回紹介するのは、矢追純一ナチスがUFOを造っていた』です。

若い世代にはいまいちピンとこないかと思いますが、眼鏡堂書店と同じ中年世代には思いっきりぶっ刺さる一冊。

矢追純一、冝保愛子、五島勉、そして糸井重里徳川埋蔵金)といえば、木曜日に心躍らせてテレビの前に正座した方も多いはず。

そんなアレな一冊をご紹介しようと思います。

 

内容的にはタイトル通りなので、それはそれとして。

 

ナチスドイツは(語弊はあるが)、夢のある国家です。

架空戦記小説やゲーム、マンガなどなど。現実のホロコーストをはじめとした負の側面を持つ国家、というよりも、この界隈では「さまざまなびっくりドッキリメカを開発&オカルト要素てんこ盛り」国家として認識されています。

実際にナチスはトゥーレ協会、親衛隊内部の学術調査機関「アーネンエルベ」、そして強制収容所内で行われたさまざまな人体実験などなど、科学と魔術が(程度の差こそあれ)並行して真面目に研究されている国家ではありました。

そしてなにより、現在は地球上に存在しない、ということがボンクラ連中の妄想をよりヒートアップさせていくのです。

そして、その妄想力に燃料を投下し続けてくれた存在こそ、本書の著者である矢追純一その人なのです。

ミステル・ヤオイ

本書の内容は、UFOは宇宙人の乗り物というだけでなく、第二次大戦末期にドイツ軍が完成させた航空兵器であり、それはベルリンを脱出したヒトラーにより今もなお南極で造られている、というもの。

そして、そのUFOこそがドイツ軍逆転の超兵器「ハウニヴ2」なのだ!

超兵器ハウニヴ2

いまさらですが、注意を一つ。

ミステル・ヤオイの持論についていくにはリテラシーは必要になります。

「あるわけねえじゃねえか!」とか「馬鹿じゃねぇの」は禁止です。

わかったうえで、このビッグウェーブに身を任せて精神を揺蕩わせる。

そんなリラックスした精神状態と思考が大事です。

なので、骨董や盆栽のように目の前にある対象物(や思想)に対して「いやあ~、大変結構なものですなあ~」という愛で慈しむ気持ちが必要です。

決して「戦車の砲塔逆に付けたら逆立ちして乗り込むのかよ?」とか「発射したら反動でひっくり返らないのか?」とか「空軍の生産物に陸軍のパーツ付けるって、生産ラインが複雑化して大変そうだけど大丈夫なのか?」とかいうことは考えてはいけません。

愛で慈しむ気持ちが必要です。

なお、ハウニヴ2の動力は「反重力エンジン」ですが、これもまた令和の世の中にあっては枯山水的な枯淡の美を感じさせるワードです。

 

また、ヒトラーのベルリン脱出についても、とあるUFO研究家から驚愕の情報をミステル・ヤオイは入手。

それ自殺したヒトラーは替え玉で、本人はナチ党官房長官のボルマンによってベルリンを脱出。アルゼンチンを経由し南極に作った基地でナチスの再興を目指している、というもの。

これも1994年(本書の初出)には、ボルマンは消息不明だったので当時としては良くささやかれていた言説ではあります。同時に、ベルリン(というか総統地下壕)脱出については軍需大臣だったシュペーアの回想録の中に(たしか)記述があったはずなので、ボルマンの脱出については公式な記録が残されています。

とはいえ、これも1998年のベルリンでの道路工事の際に見つかった多数の人骨を鑑定したところ、うち一つがボルマンのものと判明。ということは、本書に書かれているベルリン脱出以降のくだりはまるっきり……。

あと、今日的な視点でいえばカナダのネオナチ活動家エルンスト・ツンデルの主張を全面的に受け入れている、というのも少々困りもの。それも今から30年前というおおらかさがなしえたもの、なのか?

 

本書はもちろん、五島勉ノストラダムスの大予言』などを今日のすべてが分かった状態で糾弾して否定するのは簡単なことです。ただ、そのことについて眼鏡堂書店は正しさに固執する危うさのようなものを感じてしまいます。

あくまでも、本書はファンタジー。リアル、ではなく、リアリズムなのです。

嘘を嘘と分かったうえで許容して楽しむ、というのはある意味で知的かつ高尚な趣味の一つではないでしょうか?

本書を「嘘が書かれている、けしからん」と糾弾するのではなく、「楽しい読み物」として愛でるくらいの精神的・思考的な余裕を造っていきたいものです。

 

ともあれ、久しぶりに読む矢追純一は芳醇な味わいに満ちており、反重力エンジン、アルデバラン星人とのチャネリングヒトラーは生きていた!などの文言は馨しいほどの馥郁たる芳香にあふれていて、むせます。

こういうものを改めて読むと、地元の田んぼにはミステリーサークルが出現すると確信するし、牧場の牛にはキャトルミューティレーションが行われ、登下校中の小中学生は宇宙人によってアブダクションされてほしいと願うばかりです。(※当然、怪しげな金属片を宇宙人によって埋め込まれるのです)

90年代には夢があった。そんな感想とともに懐古顧主義的な余韻を味わわせてくれる、大変によろしい本でした。ブックオフで210円で買ったのですが、このテの本を今年は買い集めたい衝動に駆られていて、ちょっと困っています。

 

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