眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。
今回紹介するのは、先日現役を引退した新日本プロレス社長・棚橋弘至による『棚橋弘至のプロレス観戦入門』です。
昨今、プロレス人気が高まっています。にわかには信じがたいと思いますが。
主要三団体(新日本、全日本、ノア)にはそれぞれ柱となる人気選手がおり、インディー団体(DDTやドラゴンゲートなど)も各地で興行を行っています。女子プロレスも同様で、上谷沙耶選手が女子としては初のプロレス大賞MVPを受賞。またプロレスラーがそのキャラクターを生かして各テレビ番組に出演して知名度を上げるなど、”プロレスラー”を見る機会が大変増えている現状にあります。
「私はそんなの見ていない」という反論もあるかと思いますが、例えば自治体の親善大使を務めるプロレスラーも数多くあり、そういう点でもプロレスは注目されているといってよいかと思います。
だからこそ、原点に立ち返り、「プロレスとはどのように見ればいいのか?」
映画の見方、文学の読み方、本作はそれらと同じプロレスの見方についての入門書です。
どのくらいの入門書か?というと、実際に試合を見るには?についての回答が「チケットを買おう」だったり、プロレスの勝ち負けってどう決まるの?には「相手の両肩をマットに付けてスリーカウントをとる。相手のギブアップなどで勝負が決まります」など、初歩の初歩から”棚橋弘至が”(←ココ重要)教えてくれます。
そのほかの内容としては、新日本所属の選手たちの紹介、さまざまなプロレス技の解説(写真入り)、素朴な疑問への回答、そして最後にあるのは棚橋弘至のベストバウト特集。巻末には棚橋弘至と次代のエース候補である上村優也&海野翔太との対談があり、これ一冊でプロレスの楽しみ方がまるわかりという本になっています。
そもそもプロレスは微妙なコンテンツです。
スポーツというには違和感があり、かといって完全なエンタメとも割り切れない。
大日本プロレスやフリーダムで行われている血みどろのデスマッチがある一方、DDTでの『真夏の怪談マッチ』のように明らかな仕込みコントのようなプロレスもあります(褒めてます)。
世界的に見てもヨーロッパでのクラシカルなレスリングスタイル、アメリカのショーアップされたエンタメ路線、メキシコの華麗な空中戦によるルチャリブレなど。さらに言えば、男子のプロレスとはまた違った切り口で成立しているのが女子プロレスの世界。
「これぞプロレス」といえるものは必ずしもひとつではありません。
しかし、選手と選手のぶつかり合いで生まれる人間関係やストーリーの積み重ねで紡がれていく壮大かつ終わりのない物語。それがプロレスの魅力なのではないか、と個人的には思っています。
ちなみに、個人的にはその物語の部分が大好きなので、実際に試合をほとんど見ずに煽りVばっか見て喜んでいる有様です。
それはともかく。
そんな選手が紡ぐ物語に夢を見ているからこそ、棚橋の引退試合は東京ドームを約4万7千人で超満員にできたのでしょう。
そもそも論として、プロレスが観客に与える最たるものは「非日常」。
日常空間ではありえないさまざまなプロレス技の応酬、ありえない肉体、ありえない巨体……。ありえない×ありえない、によって生み出される「非日常空間」に身を任せることがプロレスの魅力であり、快楽だと個人的に思っています。
そんな華々しい非日常の裏側で、レスラーたちは地道なトレーニングで己を鍛え上げている。そういう相反する部分もまたプロレスの醍醐味。
ただ、人によってはこの「非日常」が受け入れがたい”ヤラセ”にも映るようです。
(※非日常にもほどがある)
「プロレスなんて」と毛嫌いするよりも「プロレスも意外と面白い」という方が生活に潤いが生まれるだろうし、何より楽しめるものが一つ増えるのは幸福が一つ増えるのと同じです。
「みんなの楽しみのひとつにプロレスというものが加われば、それが一番の喜びです」
実際にそれをマイクで語った選手もいることですし。
プロレス鑑賞の初歩の初歩、「プロレスの見方・楽しみ方」を丁寧に教えてくれる一冊でした。
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