眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【眼鏡堂書店の本棚】ノラや/内田百閒

眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。

今回ご紹介するのは、内田百閒の『ノラや』です。

作品のあらすじは、

ふとした縁で家で育てながら、ある日庭の繁みから消えてしまった野良猫の子のノラ。ついで居つきながらも病死した迷い猫のクルツ――愛猫さがしに英文広告まで作り、「ノラやお前はどこへ行ってしまったのか」と涙塞き敢えず、垂死の猫に毎日来診を乞い、一喜一憂する老百間先生の、あわれにもおかしく、情愛と機知とに満ちた愉快な連作14篇。(Amazonより転載)

読んだ身からすると「愉快」かといえば少々違うような気もしますが、まあ、おおむねあらすじ通り。

とはいえ、あらすじに書かれていないことを補足すると、本作は随筆。つまり、作者が体験した現実に起きたこと、ともとに書かれた文章です。なので、これを安易に小説としてとらえるのは、ちょっと違うかな、と。加えて、これが小説という空想の産物なのか? それとも、随筆という現実に立脚したものか? でとらえ方も変わってきます。

ja.wikipedia.org

 

それはさておき。

ここからはネタバレを含む感想その他。

 

ふとしたきっかけで飼うことになった野良猫。「ノラ」と名付けられたその猫と、百閒先生との日々が綴られます。良くも悪くも平凡な日々が続くかと思われた矢先、突然いなくなるノラ。

ここからが本作の山場のひとつ。

新聞広告を打つなど、四方手を尽くしてのノラ捜索大作戦。その間に、「どこかでおなかをすかせているんじゃないか?」「寒くて震えてるんじゃないか?」などなど、ノラを心配する百閒先生の心情が切々とつづられます。

特に、迷いネコの新聞広告は3度にわたって打たれるのですが、回を重ねるごとに、ただの飼い猫から愛猫へと知らないうちに代わっていくような印象を受けました。それは広告の文面に表れていて、書くことで、百閒先生がどれほどノラに愛情を注いでいたかが垣間見えます。その一方で、愉快犯的ないたずら電話があったりするなど、今も昔も、こういうことでしか社会に参加できない輩がいるのだなあ、と思いました。

結局ノラは見つかることなく、この作品は幕を閉じます。

代わりに飼い猫となったのがクルツ。

クルツを飼いながらも、その姿にノラを重ねてしまう百閒先生。

その彼の「お前はノラではないからね」という心情に、すごく心が振るわせられるというか……。このあたりの心情をビブリオ的に『ノラや』を小学生に説明して、いろいろ考えてもらうというのも面白そうな気がします。

そして、最後に息を引き取るクルツ。

このあたりの内容は、過去にペットを飼っていて最期を看取ってペットロスになったことのある眼鏡堂にはだいぶきついものでした。

「ペットロスなんて」と懐疑的に思う人たちには、ぜひ読んでいただきたいと思います。と同時に、これからペットを飼おうという人にも、ぜひ読んでほしいです。そのくらいに、あの辺のくだりは、百閒先生の切々とした心情が綴られていて、今日の我々にも迫るものがあります。

個人的に脳裏をよぎったのが、百閒先生の師である夏目漱石による猫への追悼。

吾輩は猫であるのモデルとなった猫が死に、当初は庭にある猫の墓に水と花と鮭を供えてお参りしていたのが、時の流れとともに家の中からになり……というのもの。これを喪失の傷が年月の経過とともに忘却という形で癒されている、ととらえるのか、それとも、怠惰な薄情さとしてとらえるのかも、論点としては面白そうです。

そして何より、クルツを看取った百閒先生の「もう金輪際、猫は飼うまい」という決意。本作が「ペットロス文学」と評される一端でもあります。

 

以上、大変に興味深い内容ではあるのですが、注意点を一つだけ。

本作は基本的に旧仮名、旧漢字で書かれています。これは著者の内田百閒が新仮名、新漢字への変更を許さなかったためです。なので、一定の読みにくさがあるのは事実。

ただ、そこまで読みにくいか?と問われると眼鏡堂的には全くそうは思わないのですが。

もっとも、20代を尾崎紅葉泉鏡花に耽溺し、旧仮名・旧漢字にあらずんば文芸にあらず、などという狂った思想にどっぷりつかっていた眼鏡堂の感覚が正しいとは到底思えないわけで。

 

今、ペットを飼っている人。

これから、ペットを飼おうという人。

過去にペットを飼っていた人。

もちろん、ペットを飼っていない人も。

いろんな人にオススメしたい一冊です。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

 

【追記】

本作『ノラや』からいろんな作品が思い浮かんだのでご紹介。

 

1 ルドルフ ともだち ひとりだち/斉藤洋

言わずと知れた児童文学の傑作『ルドルフとイッパイアッテナ』の続編。

消えてしまったノラと新たな飼い猫クルツ。そのいなくなったノラの視点から見たクルツが描かれるのが本作。まだ穢れを知らない少年だった眼鏡堂書店にザックリと心の傷を深々とつけた罪作りな一冊です。

 

2 犬を飼う そして…猫を飼う/谷口ジロー

これもまたオススメ。老犬を看取る話と、もうペットは飼うまいと誓いながら、猫を飼うことになる話。

さりげなく描かれていることではあるけれど、犬を失った犬小屋が片づけられることなく物置化していくところに、ペットロスの影が見え、とにかくわかりみしかない。

これもまた、傑作といってよい一冊。

【眼鏡堂書店の本棚】約束された場所で アンダーグラウンド2/村上春樹

眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。

今回ご紹介するのは、村上春樹によるインタビュー集『約束された場所で アンダーグラウンド2』です。

ハルキといえば村上春樹*1という具合に人気のハルキですが、正直、眼鏡堂書店は関心が全くと言っていいほどなく、読んだことがあるのは『風の歌を聞け』『パン屋再襲撃』しかありません。なお、ずいぶん昔にさらっと読んだきりなので、感想というほどの感想も、印象というほどの印象もありません。「読んだ」というだけです。ちなみに長編は全く関心がありません。

そんな眼鏡堂書店を春樹に向かわせた作品が本作。本当なら『アンダーグラウンド』から読まなければならない気がしますが、興味という点でこちらの方が勝ったので。

 

さて、本作の内容はノンフィクションのインタビュー集。前作『アンダーグラウンド』が地下鉄サリン事件の被害者(その日、電車に乗っていた人たち)へのインタビューなら、本作はその事件を引き起こしたオウム真理教の信者たちへのインタビュー集。彼ら彼女らは、何を求めて入信し、そして引き起こされた数々の事件をどのようにとらえ、そして教祖をどのようにとらえているか、が村上春樹との対話を通じて明かされます。

 

感想としては、ありきたりではあるけれど、とても興味深かった、の一言。また、感想以上にこの本をとっかかりに(自分なりに)いろいろと考えることがありました。

それは『居場所』というものについて。

昨今、『居場所づくり』として様々な団体なり取組が行われていますが、個人的にそれらには違和感を覚えます。なぜなら、『居場所』とは結果としてそうなるものであって、目的として作り上げるものではないからです。

本作に登場する彼ら乃至彼女らは、心のよりどころとして見つけた『居場所』が結果的にオウム真理教であり、その『居場所』のほかに行き場をなくした彼ら乃至彼女らを内包したまま、数多くの凶行に至りました。幸いにして本作に収録された人々が直接的に教団の様々な凶行にかかわることはありませんでしたが、それでもその教団の内部構成員である、ということには変わりありません。

行き場をなくした人々であるからこそ、今もなお(例外はあるにせよ)その教団に縋りつかねばならない現実が、そこにはあります。

結果としての『居場所』はあくまでもオープンなスペースであり、眼鏡堂書店としてはオムニバス的な乗り継ぎ場所というイメージでとらえています。

一方の、目的としての『居場所』はまるで檻のようなイメージです。そこにいるよりほかない、そこにしか『居場所』がない。『居場所づくり』で活動している団体のすべてがそうであるとは言いませんが、そうやって、そこにしか『居場所』のない人々を閉じ込めた末に、何をやろうとしているのか?そして、当初の柔らかな目的はどのようにして変質していくのか?冷笑的な興味を覚えます。

 

まあ、それはそれとして。

 

心のよりどころであったり、欠落を埋めたり、安寧を求めた末に存在するのが宗教であるのなら、これほどに救いを与えないものもないように思えます。

文学なり神話なりで神の救いは数多く描かれますが、現実に人を救った宗教がどれほどあるか?という問いに答えるのは、簡単でもあり難しくもあります。

アンダーグラウンド』と『アンダーグラウンド2』。表裏一体となった神の偶像をひたすら真摯に、そして自らの問いをたくさんの人々に投げかけながら解き明かそうとする村上春樹の姿に、初めて、彼の作家としての矜持を見たような気がします。

その一方で、本作に登場する信者(元・信者)の方々の入信から出家までの、ある意味でのフットワークの軽さや、無垢な魂の様相に、宗教というもののもつ深々とした闇を見たようにも思え、さほど厚みのある本ではないにもかかわらず、心理的な危険性を感じて頁を閉じることもしばしば。

もっとも、それは同時に信者全員に、「自分たちは悪なのか?」という問いを常に突きつけ続けることにもなっていますが。

 

地下鉄サリン事件から、30年の時を経た今。

改めて本作を読むことで感ずる何とも言えない余韻。それは、もしかしたらあの事件をタイムリーに知らない世代にこそ、読まれるべきものなのではないかと思いました。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

 

【追記】

道義的教育性を育むための土壌として宗教を新たに創造する『建神論(建神主義)』というものについて、新興宗教は大なり小なりそのような要素をはらむのだなあ、などとも思いました。

src-h.slav.hokudai.ac.jp

*1:角川春樹がいることを忘れてはならない(戒め)

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『ドグラ・マグラ』夢野久作

11/17(日)に、旧県庁前のPlayground Cafe BOXを会場に、夢野久作の『ドグラ・マグラ』を課題図書とした読書会を開催しました。

ドグラ・マグラ夢野久作


夢野久作の『ドグラ・マグラ』といえば、ミステリ四大奇書*1のひとつにして、「読むと発狂する小説」として有名な作品。幸いにして、参加者全員が精神に異常をきたすことなく参集できました!バンザイ!

加えて、眼鏡堂書店では「四大奇書総選挙」のような具合でTwitterFacebookにてアンケートを行ったのですが、総投票数はわずか7票。

そんな7票によって今回の読書会と至ったわけです。

 

主催者含め4名での開催となったのですが、初読が2名、既読が2名(夢野久作全集を購入した猛者も!)。

読んでみて、どう感じたのか?というところからスタート。

初読の方からの意見として、非常に読むのに苦戦した、と。特に後半(下巻)がよくわからなかったとのこと。しかし、別の方からは読みにくいと思ったら、思ったより読みやすかった、とも。ほかに「発狂する小説」と言われる割には、書いてある内容がまっとう、現代の精神医学を先取りしているのでは?とも。

既読の方からは、久しぶりに再読してみて、後半の新聞記事の連続がよかった、という感想を。

 

いずれにせよ思うのが、本作『ドグラ・マグラ』の刊行はなんと昭和10年!それほど前の作品にもかかわらず、ほとんど古さを感じないところ。

当時のエログロナンセンス全盛時に書かれたとはいえ、確かに読んでみると思いのほかまっとうな作品です。あの表紙とか、さまざまに手垢にまみれた感のあるエピソードによってキワモノ扱いされるものの、ひとつの小説として高い完成度と意欲的な技巧が凝らされており、個人的に国語の授業で取り上げてみてもいいのでは?と思っています。

半面、参加者全員をてこずらせたのは。本作の閉鎖性。

たった1日の出来事が、最初と最後で延々とループし続ける物語なので、とにかくどこから話せばいいかわからない。「あれを話そうとすると、前提としてアレに触れないわけにはいかないし、そうするとこのことにも説明しないといけないし……」といった具合で、本当にどこから話せばいいか大変難しい作品でした。

併せて、登場人物の全員が「信用できない語り手」なので、それが事実なのか、トリックなのかがわかりにくい。さらにややこしいのが、そのどちらともとれるという宙ぶらりん状態で話が展開。これもまた、本作が『一読ののち狂気に至る』所以かも。

眼鏡堂書店個人としては、上巻の「みんなが知ってるドグラ・マグラ」からの下巻「あなたの知らないドグラ・マグラ」は新鮮でした。「あれ?こんな話だったっけ?」というぐらつくような不安感は、なかなか味わえるものではありません。

そして、すべてにおいて一人称で話が進み、登場する資料等も客観的に語られるのではなく、主人公の視点で見ている・読んでいるという体なのも、改めての驚き。

作中の『脳髄論』にある「脳は考えるところにあらず」という箇所は、最近の脳科学において一定の論拠のあるものとして研究されています。その『脳髄論』において、細胞の一つ一つが思考を持っていて、それを人体全体に反映させる中継点としての鏡が脳髄である、という表現は、昭和10年という時代性を考えてもなかなかにモダンで先鋭的だなあ、と思いました。

何かが起こっておるが、何も起こっていない。そんな起きていながらも起きていない日々が延々とループし続ける。そのループの中で脳髄の鏡に光る胎児の夢や心理遺伝が折り重なるのが、この『ドグラ・マグラ』。

ぜひ、一読していただきたいものです。

読書会では言わなかったのですが、映画『バリゾーゴン』を思い出したり出さなかったり。

みんなのトラウマ『バリゾーゴン』

 

さて。

 

仕事上の繁忙期&その他もろもろが重なり、開催が困難だろうと判断しましたので、来月12月の読書会はお休み。

1月は課題図書を新田次郎の『八甲田山 死の彷徨』での開催予定です。

詳細は決定次第、お知らせしますので、少々待ちください。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

 

【追記1】

今回会場をお貸しいただきましたPlayground Cafe BOXさまより、映画版『ドグラ・マグラ』のパンフレットをお貸しいただきました。88年の映画なのですが、堤清二率いるセゾングループ全盛期。安部公房スタジオをはじめ、映画や演劇界にじゃぶじゃぶお金をつぎ込むパトロンがいた時代は、今のせちがらい世の中を見るにつけ、うらやましくもあり。

映画版『ドグラ・マグラ』のパンフレット

【追記2】

ドグラ・マグラ研究家の梅乃木彬夫(うめのき あきお)さまより、Twitter上にて様々リアクションいただきました。お勧めいただいた『鬼滅の刃ドグラ・マグラ』もいずれチャレンジしようと思います。(というか、『鬼滅の刃』を全く知らない、と言い出しにくい雰囲気)

 

 

*1:夢野久作の『ドグラマグラのほかに、中井英夫『虚無への供物』、小栗虫太郎黒死館殺人事件竹本健治匣の中の失楽』がある。なお、ミステリ三大奇書と表記する場合は『匣の中の失楽』を除いた三作品とする。

【出店しました】一箱古本市@ひがしね

11/3に山形県東根市にあるまなびあテラスで開催された一箱古本市に出店しました。

一箱古本市@ひがしね

前日が雨だっただけに客足を心配したのですが、当日は見事な秋晴れ!

東根市の総合文化祭の中日ということもあり、たくさんのお客さんでにぎわいました。

くじ引きで決まった出店場所は、館内に併設されたカフェ『オイッテマルシャン』の直に隣。

すべてをひっくり返そうとする眼鏡堂書店がマルシャンの客をガラガラにしてやる!

*1

ストロングスタイルな店舗設計

見る人が見ればわかるのですが、新日本プロレスの要素が高め。

おかげさまでケヤキ書房さんとプロレス談議で盛り上がりました。

眼鏡堂書店の推しは、鷹木慎吾です。


www.youtube.com

 

ただちょっと個人的に心残りなのが、今回の出店に関して結構急な出店&亡父の蔵書整理だったため、読んでない本が大半。どんな本か聞かれた際に、思うように答えられなかったのが、ちょっとねえ……。あとコンセプトも絞れていないし、ただただ持ってきた、という要素だけなのも、心残り。

あと、某読書会主催者からは「雑誌のラインナップがニッチすぎる」との指摘を。

フハハハハハ、某読書会主催者よ、怖いか?眼鏡堂書店の雑誌ラインナップが!

メタル、プラモ、真空管、プロレスと各種取り揃えております。

また、「100円でもイラネ」という失敬なお言葉も頂戴しました。

山形読書会公式応援レスラー(仮)のJrチャンピオン、DOUKIさん特集号

そんなこんながありつつ、感じたことをいくつか。

 

意外に眼鏡堂書店の読書会が知られている

結構な人数の方々から、「読書会しているの知ってます」とお声がけいただきました。考えてみれば、コロナ禍真っ最中の緊急事態宣言下で行ったオンライン読書会から数えれば5年くらい?(※そもそも主催者が把握していない)地道な開催がこの結果になったのかと思うと感慨深いです。図書館にチラシを置いてもらったりもしたけれど、個人的に一気に拡散したな、と感じるのはやっぱりTwitter

併せて、開催後はなるべく早くレポートを挙げるようにしているのも、一因と思いたい。対面で開催するようになってから、山形読書会さんからもらった運営マニュアルも大きい。どんなに慣れてきても、運営マニュアルに沿った運営は絶対に変えないという風に考えています。

 

あの若者は、40年以上前の小説に何を感じるのだろう?

様々本をご購入いただき、大変ありがたく思っております。合計で41冊の本が巣立っていったわけですが、その中でひときわ印象に残ったことを。

今風のシュっとしたイケメン若者男子が、村上龍の『限りなく透明に近いブルー』を買っていきました。今から40年以上前の小説で、若者の様子から村上龍を全く知らないことがうかがえました。たぶん、タイトルにひかれて買ったのでしょう(100円だしね)。たいしたことではないかもしれませんが、あの本の主人公と彼は大体同じくらいの年齢のはず。読後、どんな感想を抱いたのかちょっと気になります。それに何より、あの若者の中に、新しい何かが加わればいいな、などとも思いました。

 

読書会開催のハードルは思ったより低い

ほかの出店者の方で読書会を主宰している方があり、いろいろとお話をしました。仙台の方だったのですが、共通するのは読書会を開催することのハードルは思ったほど高くない、ということ。併せて、リピーターの方を大事にしつつも、さらに初めての方を大事にしていこう、ということ。何事も最初が一番ハードルが高いわけですが、会場さえ押さえてしまえば、あとは何とかなる、というのが個人的な印象。「集まらなかったら?」という心配については、その会場を貸してくれる人との間で、デッドラインを明確に決めておくこと。あとは何よりも「続ける」ということ。定点的に継続していれば、誰か、の目に必ず留まるので。

あと、余談として「この本で読書会をしてください!」というリクエストについては(そんなリクエストをされたこともないですが)、「じゃあアナタがやってください」としか言えないです。冷たく聞こえるかもしれませんが、いろんな人がいろんなやり方と切り口で読書会をしてくれれば、それだけ本好きの輪が広がります。

なので、リクエストするよりやってみる、のが大事だと思います。

 

よいものは脈々と受け継がれていく

お隣の一箱さんのお嬢ちゃんから、斉藤洋の『ルドルフとイッパイアッテナ』をお買い上げいただきました。「この子、『ルドルフとイッパイアッテナ』が大好きなんですよ」とお母さん。わかります、眼鏡堂書店も穢れを知らない純真な少年だったころ、何度も何度も読んだ本です。

こうやって、受け継がれていくのだなあ、などと感じました。

 

次回の一箱は『歴史&時代小説まつり』にしよう!(提案)

今回、コンセプトを絞れなかったので、次回は時代小説や歴史小説に絞った出店をしてみたいところ。前に『司馬遼太郎山田風太郎 ダブル太郎まつり』をやって痛い目にあったので、そこはもっと拡大して間口を広めにとりたい。

あと、アマゾンでよさげなものを見つけたので、これも入手したいところ(願望)

 

さて。

今回の一箱でも配布したのですが、11月の読書会の参加者を募集しております。

詳細はリンク先をご覧ください。

glassesbookstore.hatenablog.jp

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

*1:元ネタはコチラ

www.youtube.com

【開催のお知らせ】ドグラ・マグラ/夢野久作

遂に11月に入り、年末がすぐそこまでやってまいりました。

そんなセミ年末の11月の読書会のご案内です。

 

今回の課題図書は、TwitterFacebookにて行った「ミステリ四大奇書総選挙」。その結果、みごと1位を獲得した夢野久作ドグラ・マグラ』です!

ちなみに投票数はわずか7票。

すべてTwitterで、Facebookは0票でした。ありがとうございます。

あらすじは、

探偵小説家夢野久作の代表作とされる小説。
構想・執筆に10年以上の歳月をかけて、1935年(昭和10年)1月に松柏館書店より刊行された。
小栗虫太郎黒死館殺人事件』、中井英夫『虚無への供物』と並んで日本探偵小説三大奇書に数えられており、「本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす」とも評されている。

もはやあらすじにもなっていない気がしますが、はっきり言って本作は要約不可!実際に読んでみるとその理由がわかります。

なお、本作を読了した江戸川乱歩は不調を訴えて精神病院に運ばれ、同じく読了した横溝征史は発狂寸前。それらから、「一読ののち狂気に至る」つまり「読むと発狂する小説」といわれるようになりました。

眼鏡堂書店の読書会史上、もっともデンジャラスな読書会をご用意いたしました!

 

それでは日時や場所等のご案内です。

 

【日 時】 

11月17日(日) 14:00~16:00

※11月14日(木)の17:00を締め切りとします。

 

【場 所】 

Playground Cafe BOX

〒990-0042 山形県山形市七日町3丁目5−番18号

※お車でお越しの方は周辺駐車場をご利用ください。

 

 

【参加費】
Playground Cafe BOXでの1品以上の注文をお願いします。


【定 員】
6人(※主催者含めた2名を最少開催人数とし、満たなかった場合は中止とさせていただきます)


【お申し込み方法】

以下のどれかで申し込みください。

1)コメントで参加のメッセージを。

2)openworksnovel@gmail.comに参加のメールを。

3)TwitterのDMやメッセージで。


皆様のご参加をお待ちしております。
拡散希望です。バンバン広めてください。

【出店します】一箱古本市@ひがしね

さて。

眼鏡堂書店です。

 

眼鏡堂書店、は屋号というかペンネームみたいなもので実際の本屋ではないのですが、年に数回(1回かもしれん)、実際の本屋に限りなく近い存在へとメタモルフォーゼするのです!

 

というわけで、11/3(日)東根市のまなびあテラスにて開催される一箱古本市に出店します。

一箱古本市@ひがしね

普段であれば、無軌道なラインナップで出店するのですが、今回は昨年亡くなった父の蔵書整理を兼ねています。そんな父の蔵書の中から、皆さんに読んでいただけるであろう本を中心にセレクトしています。もちろん、眼鏡堂書店の蔵書からも出品しますが。

お値段は、算数が苦手な眼鏡堂書店のアタマにやさしい、1冊100円均一!

そんなラインナップの中から、一部をご紹介します。

 

トンデモ本の世界』

トンデモ本の世界

UFO、超科学、超古代史、大予言、ユダヤの陰謀...著者は「衝撃の真実!」のつもりだが、はたから見れば大笑いのトンデモない本のことである!ハルマゲドンを笑い飛ばした痛快無比のベストセラー。SF作家・山本弘を中心に、先ごろ亡くなった評論家の唐沢俊一オタキングこと岡田斗司夫などなど、執筆陣は濃い面々。また、奥付等にはかかれていないが、現在映画評論家として活躍している町山智浩が編集者だったころ、初めて出したヒット作がコレ。

 

『世界の駄っ作機』岡部ださく

世界の駄っ作機/岡部ださく

月刊モデルグラフィックス市場で今なお連載されている人気コラム。戦史を彩った数々の名作機の陰に、誰に知られることなく消えていった駄作機あり。歴史の狭間に消えていった駄目飛行機たちの涙と笑いのストーリーを紹介する。表紙の飛行機、勇ましく飛んでるだろ?実際、どのくらいの高さまで飛べるのか、この本読むと腰抜かすぞ!なお、岡部ださくは軍事評論家岡部いさくペンネーム。

 

天地人火坂雅志

天地人火坂雅志

上杉家・景勝の家臣でありながら、豊臣秀吉徳川家康らを魅了し、また、最も恐れられた男——その名は、直江兼続

上杉謙信を師と仰ぎ、兜に「愛」の文字を掲げた兼続は、その波乱の生涯を通じて、民・義・故郷への愛を貫きました。
「利」を求める戦国時代において、「愛」を信じた兼続の生き様は、弱者を切り捨て、利益追求に邁進する現代人に鮮烈な印象を与えます。

米沢を中心に大河ドラマフィーバーを巻き起こしたのが本作。お値打ち価格なのでぜひ勝ってください。あと、眼鏡堂書店は村山地方出身なので上杉直江は敵です。

 

『雨に打たれて』アンネマリー・シュヴァツェンバッハ

雨に打たれて/アンネマリー・シュヴァツェンバッハ

本の詳細は、コチラから。

glassesbookstore.hatenablog.jp

よい本でしたが、眼鏡堂書店よりも刺さる人がいるだろうから放出。地方でこういう本を入手する機会も少ないので、今がチャンスですよ!

 

そのほかにも、浅田次郎東野圭吾有川浩筒井康隆井上ひさしといった人気作家のほか、村上龍高橋源一郎島田雅彦といった純文学作家も取り揃えました。

皆様のお越しをお待ちしております。

 

併せて、11/17の課題図書『ドグラ・マグラ夢野久作の読書会、その募集もこの日から開始する予定です。そちらについても、皆様のご参加をを待ちしております。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『地元を舞台にした本&地元について書かれた本』

10/20(日)に、さくらんぼ東根駅前のコーヒー屋おおもりにて『地元を舞台にした本&地元について書かれた本』をテーマにした読書会を開催しました。

いつもの課題図書形式ではなく、テーマに沿った本を自由な切り口で紹介するという初めての試み。告知当初はパタッと反応がなくなり、だいぶ心配したのですが主催者含め4名での開催となり、一安心したところです。

地元を舞台にした本&地元について書かれた本

地元を舞台にした本&地元について書かれた本』というテーマはありつつも、そこをどんな切り口で攻めるかは参加者の自由な発想におまかせする、という今回の読書会。

 

眼鏡堂書店は、

長瀞の教育百五十年史』

・小学校の歴史を中心に、地域の生活や文化などを俯瞰する。歴代のPTA会長の一覧や昔の行事(青年団や若妻会など)など知らないことがまだまだ多い。

『上野介の忠臣蔵清水義範

忠臣蔵を悪役とされる吉良の側から描いた小説。米沢の上杉家と吉良家の関係性を初めて知る。ちなみに、昭和の頭ぐらいまで米沢では『忠臣蔵』は一切禁止だったらしい。その理由は、本作を読むと納得。

 

ここから先は参加された人ごとに、眼鏡堂書店の感想をば。

 

小笠原さん

『山形怪談』黒木あるじ

いわゆる「高島暦」への信仰が非常に厚いのが山形県。特に、大将軍や三隣亡などの吉凶は大手ゼネコンの建設計画をも左右するほど。また、チョイスされた本書では荘内の話が多く、「さすがは即身仏と山伏のパラダイスだぜ」と思いました。

あと、小笠原さんが幽霊を見た、という驚きの話も。

 

ももやさん

『五百澤智也の世界』

『五百澤智也特集』

『山の自由研究』

『小荷駄の日差し』佐藤紀之

山形出身の地理学者、五百澤智也(いおざわ ともや)の話。いきなりニッチなところから切り込んでまいりました!国土地理院在職中は、地図作成に辣腕を振るった偉人です。地図ではなく鳥観図なのですが、実際に登山される方ということでその経験も加味されたものと考えると趣深いものが。山形市立図書館の元館長の歌集も、ももやさんらしいチョイス。

ja.wikipedia.org

 

りささん

『君のクイズ』小川哲

『盤上の向日葵』柚月裕子

『こりずにわるい食べもの』千早茜

『旅のつばくろ』沢木耕太郎

りささんの切り口は「外から見た山形」。40万円以上の高級将棋駒、遊佐という名字を使いたいからじゃあ遊佐に行ってみようという沢木耕太郎。山形は食べ物がおいしいのになぜおなかが減らないか?それは車移動が多いから。そして、クリーニング小野寺。

いったいどういうクイズの問題なのか?と個人的に気になります。

意外と山形、使われてる!

www.youtube.com

 

 

それぞれユニークな切り口で選書していただき、大変楽しい読書会となりました。

現在は選挙期間中ということもあり、「どこへ向かうのか?」という未来志向な話が地元おこしや町おこし、地域イベントで語られることがより多くなった印象。しかし、「どこから来たのか?」という過去の積み重ねの部分を見ることも、こういうご時世であればこそ重要ではないか?そう考えての今回の読書会なのでした。このテーマを提案してくれた友人には大変感謝しております。

みなさまも、改めて自分の地元を知ってみる、あるいは新天地で生活されている人はその場所について知ってみる、というのも面白いと思います。考古学的な見地ではなく、まずは興味本位の肩の力を抜いたスタンスで図書館や書店の郷土資料の棚を漁ってみると思わぬ発見があるかもしれません。

 

さて、今後のイベントや課題図書についてのお知らせです。

 

一箱古本市@ひがしね

11/3(日)に、東根市のまなびあテラスにて開催される一箱古本市に出店します。

皆様のお越しをお待ちしております。

詳細は、まなびあテラスのリンクから。

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【眼鏡堂書店の読書会】ドグラマグラ夢野久作

ずいぶん前に行った「四大奇書総選挙」にて、総投票数7票によって決定した『ドグラマグラ』読書会。一読ののち狂気に至る、と言われ、「読むと発狂する小説」として風名な本作。一読ののち発狂して参加者ゼロとなるかもしれないデンジャラス読書会!

 

日時 11/17(日)14:00~16:00

場所 Playground Cafe BOX  山形県山形市七日町3-5-18

 

正式な告知までしばしお待ちください。

 

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