眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『ゴドーを待ちながら』サミュエル・ベケット

11月19日(日)に、山形市七日町のTully'scafeにて、サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』を課題図書とした読書会を開催しました。

主催者の眼鏡堂書店含め、3名の参加がありました。

 

で。

 

当初、会場は旧県庁・文翔館前のPlayground Cafe BOXを予定していて、なおかつそこが満席等だった場合に備え、第二第三候補を設定して当日に臨んだわけですが……。

Playground Cafe BOXが読書会の開催時間に使えないことが判明。

そのうえ、第二第三候補も軒並みダメというスペクタクル溢れる急展開。

慌てて会場を七日町のTully'scafeに変更して事なきを得たのでした。

 

快く会場変更にご対応いただきました、参加者の皆様、大変ありがとうございます。

快く会場変更にご対応いただきました、参加者の皆様、大変ありがとうございます。

(大事なことなので2回言いました。)

 

読書会の参加者は、

 

眼鏡堂書店

しぶやん さん

ナズハ さん 

 

の三人。ナズハさんは読書会自体が初めてとのこと。

というわけで、自己紹介と最近あった嬉しかったことや楽しかったことを簡単に話して肩の力が抜けたところで、読書会スタートです。



今回の課題図書は、サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』。

小説以外のジャンルを取り上げるのは初めてで、しかも眼鏡堂書店を含めた全員が初読という初めてずくし。眼鏡堂書店&ナズハさんがこれまでの安堂・高橋訳、しぶやんさんが岡室さんの新訳というラインナップ。これによって旧訳と新訳とを比較できたのは大変興味深かったです。

 

ゴドーを待ちながら』といえば、現代演劇の古典であると同時に不条理演劇の金字塔。映画『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇や、中心人物が登場しないという構成において『桐島、部活やめるってよ』がその影響下にあるなど、大変に有名な作品です。

その一方で、不条理演劇、という冠が独り歩きしている感もあり、それが余計にこの作品をマイナスの意味で神格化させているようにも思われます。

 

そんなわけで、参加者それぞれの初読の感想がコチラ。

 

眼鏡堂書店 全く頭に入ってこなかった。様々調べたりして概要をつかんでから再読すると、妙にコントっぽく感じた。

しぶやん さん 面白かった&楽しかった

ナズハ さん 最初は難しく感じてどう読めばよいかわからなかった。読んでいるうちに動きが分かってきて、面白くもあり物悲しくもあった。

 

明確なストーリーラインがなくただただ待ち続ける内容に戸惑った、というのも全員の共通した感想。そのうえ、待ち続けた末に結局ゴドーはやってこない、という結末。

そのため、ゴドーがいったい何者なのかもわからず、同時にそのほかの登場人物もバックグラウンドがほとんど語られないため、劇中の関係性はただただ読み手にゆだねられます。だからこそ、様々な解釈が成り立ち、それが時代を超えた普遍性を生じさせるのだと思いました。

 

読書会で初めて取り上げる戯曲ということもあり、「演じるならどの役?」という質問をしてみました。

回答がコチラ。

 

眼鏡堂書店 ポッツォかラッキー

しぶやん さん エストラゴン

ナズハ さん 男の子

 

開催のお知らせで頂いたコメントには、「どの役も全力で拒否」という旨の回答をしたのですが、数日たつとポッツォとラッキーのやりたい放題&全力でのボケたおしの突き抜けっぷりが興味を引いた次第。逆に、ナズハさんが演じてみたいという男の子の役が、眼鏡堂書店が絶対にやりたくない役だというのも面白かったです。

また、しぶやんさんからはこの作品自体の、ポストモダン的な部分、あえて本質をもたない(ゴドーがやってこない)構造や、相対化についての指摘があり、まったく思いもしなかったことなので大変興味深かったです。あわせて、ゴドーが53年初上演という点からの戦後支配体制についての切り口もこれまた興味深かったです。旧態的な支配関係をポッツォとラッキーに、これからの関係性をヴラジーミルとエストラゴンに見て取れるのは確かにおもしろい切り口。特に1幕目と2幕目のポッツォとラッキーの関係性の変化はある種の時代性と考えるのも面白い。

元のタイトルが『待つ』であることの、待ち続けるだけというシンプルな芝居の方向が、シンプルであるがゆえに背景を持たず、だからこそ背景情報が必要とされる小説では作りえず、だからこそこの作品が戯曲であらねばならなかったのかと思うと、今回の課題図書に本作を選んでよかったなあ、と思いました。なによりもまず、名前は聞いたことがあるけど読んだことのない有名作品を実際に読んでみて、あれこれ話してみることはひとりで読んだだけでは得られないものが多々あって、それが課題図書形式の読書会の面白さだと改めて実感しました。

ご参加いただきました皆様、大変ありがとうございました。

 

さて、次回は12月24日に山形市で開催されます一箱古本市への出店のため、読書会はお休みです。来年は多分1月から開催できればと思っています。課題図書や日時等はしばらくお待ちください。

以上、眼鏡堂書店でした。