眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『マーダーボット・ダイアリー』マーサ・ウェルズ

9/23(日)に、さくらんぼ東根駅前のコーヒー屋おおもりにて、マーサ・ウェルズの『マーダーボット・ダイアリー』を課題図書にした読書会を開催しました。

当日は主催者含め3名の参加者での読書会となりました。ご参加いただきました皆様、大変ありがとうございます。

 

人間苦手、ドラマ大好きの警備ロボット”弊機”が主人公という、一風変わった人気SFシリーズ。とにかく面白いこの作品で、キャッキャウフフの弊機祭りにしたかったのですが……。

 

バン!と出されるiPad!おっと、若き芸術家がスラスラと描き出したぞ。おーっと!あれは弊機だァァァ‼

若き芸術家の肖像

バン!と出される中原尚哉翻訳の巨大ロボットSF小説たち!「絶対に好きでしょ」という圧の強い推し!拒否ったら「あの人、男子の魂がないみたいよ」という、えぐるような娘からの連携攻撃が!

創元社の回し者かってくらいに大量のロボSFが。

 

 

助けてください。

眼鏡堂書店は普通の読書会がしたいのです。

 

 

それはさておき。

 

 

参加者母娘がSF剛の者だったので、こっちが知らない情報がバシバシ出てきました。

作者マーサ・ウェルズのTwitterなんて知らんがな。

というわけで、作者が執筆中に聞いていたプレイリストとのこと。

マーサ・ウェルズが執筆中に聞いていたプレイリスト

なるほどなるほど、coldplayか。

眼鏡堂書店はcoldplayを聞いたことがありませんが、知識として知っているcoldplayのイメージ図を貼っておきます。わかる人にはわかるはずです。

90年代が生んだLINE6の名機 DL4

 

さっぱり読書会の話をしていないので、話を戻します。

本作の特徴はなんといっても、弊機のキャラクター。人間苦手なのになぜだか人間よりも人間臭いという他にない個性。

例えば、カズオ・イシグロの『クララとお日様』やイアン・マキューアンの『恋するアダム』と比べても、前者2作がロボット(AI)でありながら人間を目指そうとするのに対して、弊機はあくまでもロボットとしてのアイデンティティがある。人間は人間で、ロボットはロボット、という考え方はもしかしたら今風の感覚なのかも。

さらに言えば、これだけの万能感がありながら、人間と取って代わろうという意識が皆無。一昔前のSF作品のAIといえば、暴走した挙句人類を滅ぼそうとするのがデフォルトでしたが、弊機は人類を滅ぼしたりしません。なぜなら「人間を滅ぼしたら誰がメディア(※ドラマのこと)を作るのですか?」

あと、人間の目には触れない領域で、AI同士の独自の世界が構築されていて、そこには(少なくとも弊機にとっての)ヒエラルキーが存在するところも面白く読んだとところです。

弊機を含めた登場する各AI(ロボット)のイメージも3人それぞれ異なっていて、共感するところもあれば、う~ん、となるところもあって面白かったです。

眼鏡堂書店の、ARTの腐女子感や、ミキ=チコちゃん、弊機に最も近いのはドラえもん、という一連のイメージはSF母娘に困惑をもたらしたようです。なお、弊機=ドラえもん(声の出演:大泉洋)です。ますます母娘を困惑させました。

SF母娘からの指摘で、登場人物の性別が結構女性に偏っていて、弊機自体も原文では一人称がShe。もっとも、それをユニセックス&無機的な一人称としての”弊機”落ち仕込んだのは翻訳者の力量だと思いました。さらに、カップルが同性同士だったり、アンコンシャスバイアスにおける男女の役割を意図的に逆転させてあったりと、前段の性別の偏りの部分も含めて、これらは眼鏡堂書店が全く意識していなかった部分なので、新鮮な驚きがありました。

その一方で、今回の読書会で言ったのですが、そういった現在進行形で論議されている問題を、娯楽エンタメ作品に盛り込まなければならない現状に息苦しさみたいなものを個人的には若干の否定的要素として感じたところ。

面白かったけれど、なぜか両手を挙げて大喜びすることがなぜかできなかった、というのはもしかしたらその辺の理由なのかもしれません。まあ、個人的な部分ではあるのですが。かといって、面白くなかったわけではありません。念のため。

なお、本作シリーズは本編上下巻と、『ネットワーク・エフェクト』、『逃亡テレメトリー』のほかに、さらに3冊刊行予定とのことで、更なる弊機の活躍とボヤきが楽しみです。

 

ご参加いただきました皆様、そして会場をお貸しいただきましたおおもりのマスター&ママさん&はるなちゃん。大変ありがとうございました。

 

さて、次回以降の読書会のご案内なのですが、この読書会の時は10月開催とアナウンスしたのですが、改めて自分のスケジュールを確認したところかなり厳しいことが判明。

既にTwitterFacebookではお知らせしていますが、主催者多忙につき。10月は読書会をお休みします。

併せて、以前からアナウンスしていた11月の課題図書・大江健三郎万延元年のフットボール』(※読書会終了時に、同じく大江健三郎の『飼育』に変更とアナウンスしています)ですが、10月がお休みということでもう一度課題図書を決め直したくなり、一度白紙とします。すでに読み始められていた方がいらっしゃいましたらスミマセン。

11月は11/19(日)の予定ですが、10月に入りましたら正式な開催日と詳細についてお知らせしますのでしばしお待ちください。

 

以上、眼鏡堂書店でした。

 

【追記】

若き芸術家よりいただきました、弊機です。

上手い!

イラストを頂きました!ありがとうございます!