眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『蹴りたい背中』綿矢りさ

4/29(日)に山形市のPlayground Cafe BOXにて、綿矢りさ『蹴りたい背中』を課題図書にした読書会を開催いたしました。

ご参加いただきました皆さま、ありがとうございます。

蹴りたい背中/綿矢りさ

『蹴りたい背中』といえば、史上最年少での芥川賞受賞作。同時受賞が金原ひとみ『蛇にピアス』だったのも併せて、社会現象といえるほどになりました。受賞作が掲載された文藝春秋が最も売れたことでも知られていますが、当時の空気感をリアタイした身としては正直、肯定的な空気は薄く「あんなものが芥川賞をとるようではもう終わりだ」くらいの否定的な空気感が濃かったような記憶があります。

そんな話題作だからこそ手が伸びず敬遠する向きもあろうかと思い、あえて今読んでみようというのが今回の読書会。20年の年月を経て、改めて『蹴りたい背中』を読んでみました。

 

眼鏡堂書店の初読は20年前。それ以来の再読ということでお話の方はすっかり記憶から消えていました。なので『蹴りたい背中』のタイトル通り、主人公のはつがにな川を本当に蹴る展開には今更ながら驚きました。

基本的に学校が舞台で非常に閉鎖的な世界の中でお話が展開します。同じく学校が舞台の閉鎖的な世界の中でお話が展開する作品に、『推し、燃ゆ』があります。

『推し、燃ゆ』が閉鎖的に物語が結ばれるのに対し、『蹴りたい背中』は閉鎖的でありながら最後は開放的に終わる、という点で奇妙に対照的な印象を受けました。

参加者全員の共通点として、「さびしさは鳴る」から始まる文章のうまさ・美しさ。五感を駆使する文章の運び方などなど、やはり芥川賞をとるだけの作品ではあるという印象。

時代的には、スマホはおろか携帯電話もない時代。だからこそ、はつがにな川のことをあれこれ思うのは、気軽につながることができる今では逆に難しいことのように思えます。参加者の方からの”「今、何してるの?」に想像を巡らせる時代”というのは言いえて妙。併せて、はつとにな川との友達以上恋人未満のもどかしい距離間の関係性は思春期特有のもどかしさ、という風に個人的に考えていました。

今回ありがたかったのはなんといっても綿矢りさファンの方の参加。

その方曰く、綿矢作品に通底する「Look at me」。私を見て、というはつににな川が振り向いてくれないからの『蹴りたい背中』は聞いてすごく腑に落ちました。なるほど。

なお、その方の綿矢作品オススメ3選は、

『勝手にふるえてろ』

『激しくきらめく短い命』

そして『蹴りたい背中』

 

どうしても受賞当時の社会現象的な熱狂から手を出せずにいる方も多い印象。

だからこそ、完全に熱の冷めた今だからこそ読んでみてはいかがでしょうか?(ゴールデンウイークもあることだし)

20年の時を経て再読しましたが、少しも古びた印象はありませんでした。

『蹴りたい背中』オススメです。

 

さて。

 

5月の読書会は日時場所は未定。

ですので、先に課題図書をご案内します。

課題図書は、伊藤計劃『虐殺器官』です。

あらすじは、
9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。
先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……
彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは?
ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。

日時場所等詳細が決まり次第、イベントページをアップしますのでしばらくお待ちください。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店 をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

 

【追記】

『蹴りたい背中』ということで、フェイスブック募集ページの画像はコレ。

蹴りたい背中