眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。
今回紹介するのは、シーラン・ジェイ・ジャオの中華ロボットアクションSF『鋼鉄紅女』です。
あらすじは、
華夏(ホワシア)の辺境の娘、則天(ゾーティエン)は、異星の機械生物・渾沌(フンドゥン)と戦う人類解放軍に入隊する。巨大戦闘機械・霊蛹機(れいようき)に搭乗し、人類を滅亡させんとする渾沌と戦うのだ。霊蛹機は男女一組で乗り、〈気(き)〉で操るが、ペアの女子は多くが精神的重圧から死ぬ。ある密計のため、則天はあえてパイロットに志願し、過酷な戦いに身を投じるが……。中国古代史から創造された世界で、巨大メカが戦場を駆ける。英国SF協会賞受賞の傑作アクションSF。(Amazonより転載)
今年、続編である『天空機龍 鋼鉄紅女2』が出版されたので、積ん読を切り崩しました。
前に少し読み進めていたのですが、あえなく挫折。
今回やっと読了できました。えらいぞ、自分。
で。
なぜ挫折したかというと、それは本作の本質的な部分について。
絶対的な家父長制と男尊女卑の世界の中で、それに抗い、壊していこうとする主人公・則天。彼女が終始怒っているのが、個人的に辟易してしまい、あえなく挫折。
読了した今となっては、女性である、ということで透明な天井に苦しめられている人たちの背中を押す象徴としての主人公。そういうキャラクターである、というくらいの理解はできたわけですが……。
ただ、読了した今となっても、この則天のキャラクターがあまり好きになれません。
言わんとすることはわかるのですが、かといって(読んでいる限り)その家父長制や男尊女卑への怒りがご都合主義に思えるところがしばしば。
「私は女を武器にしない!」という舌の根も乾かないうちに女であることを武器にして甘えてみたり、どうにも都合がいいというか……。
ルッキズムを批判していながら、自分自身は『薬屋のひとりごと』の猫々みたいにかわいらしく美少女に描かれているのも、これまた都合がいいような……。
作品の根本をなす作品として、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』があるらしいのですが、こちらは未見。あまり見たいとも思いませんが。
加えて、”中華版パシフィック・リム”みたいに形容されることもしばしばですが、そんなにパシリム感があるかというと……。
うん、ゼオライマーが一番本作には近いかな?
あと、若干訳文にも言いたいことが。
秦政、という表記よりは嬴政と表記してもらった方が、ある程度中国史がわかる眼鏡堂書店からすると腑に落ちます。というかその方が普通のような気が。
あと中国史の人物からキャラクターが引いてあるのですが、それらが現代中国語読みなのも個人的に読みにくい。でも、これは日本語読みすると元の人物像に引きずられてしまうからなあ……。
まずひとしきり文句を言いましたが、全体的には面白く読みました。
日本といえば世界に関たるロボット大国なわけで、ガンダムを筆頭にボトムズや勇者シリーズ、マジンガーZなどなど。
それらの流れと全く違う個性を持っている『鋼鉄紅女』はなかなか異質なキャラクターで面白くあります。ただそれでも、作品を貫くフェミニズム思想やLGBTQ、クウィアといった部分でノーサンキューになろう人もあるかと思われます。
さすがにそれらを無視しても面白いとは個人的には言えないので、意外に好みは両極に分かれそうです。とあるポッドキャストでは、本作はずっと山場が続いて面白い、という好評がされていましたが、個人的には構成があまりうまいとは感じませんでした。まあ、これからきっと面白くなるのでしょう。なぜなら、これがジェイ・ジャオさんのデビュー作だからです。作家のデビュー作にはその当人が語りたいことのすべてが詰まっている、とは言いえて妙。にしても、詰め込みすぎだろ、とは思いましたが。
スーパーロボットものかと思いきや、なんかそういう味は薄く、もっと理知的な作品のように感じる一方、理知的でありながら冷静さが全くなく直情的にヒャッハー!しているようにも見え、いったい自分が何を書いているのかよくわからなくなりました。
要約すると、則天が『怒りのデスロード』のフュリオサに見える瞬間がたびたびありました。V8。
『天空機龍』はこれから読むのでそれなりに楽しみです。
登場人物の大半が隋唐あたりなので、以降の登場人物がそれより前の時代なのか、後の時代なのか、わくわくします。
あと則天を中心にした(?)三角関係も、三者相愛(BLアリ)というなかなかに斬新なので眼鏡堂書店は喜んでいます。
だとすれば、話が進めば、男×男や女×女のコンビが出てくるんじゃねえかと鼻息だって荒くなりますよ!両性具有とかな!トランスジェンダーとかな!
楽しみです(困惑)
※何を言っているかわからないかと思われますが、動画などを貼り付けます。
あと、マーダーボット回でお越しいただいたSF親子にも言ったのですが、この霊蛹機のプラモデルがボークスから(←とても重要)発売されるのを楽しみにしています。
くれぐれも、ボークスです。
バンダイではありません。
あとは……。
ジェイ・ジャオさんがこの作品に込めた怒りのたどり着いた先が、『家畜人ヤプー』にならないことをちょっと心配しています。
この世界をぶち壊してやる、という則天の怒りが『イデオン』にならないようにも祈っております。
ともあれ、面白く読んだのはたしかなので、次作を読むのが楽しみです。
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