11/23(日)に山形市にあるPlayground Cafe BOXにて、江藤淳『妻と私』を課題図書とした読書会を開催しました。
ご参加いただきました皆さま、ありがとうござます。
最初に書いておきたいのですが、今回の課題図書は自分でも「なぜこれを選んでしまったのか?」と思うほどきつい読書体験となりました。その結果、本の集合写真を撮り忘れました。ドンマイ、自分。

今年1年にわたって『恋愛小説を読むことで眼鏡堂書店は人の心を取り戻せるか?』に取り組んできたラストが今回の課題図書。果たして、眼鏡堂書店は人の心を取り戻せるのでしょうか?
それはさておき。
『妻と私』は1999年出版。四半世紀前のベストセラーなのですが、その売れ具合は異様の一言に尽きます。眼鏡堂書店の手元にある『妻と私』の奥付を見ると、1刷が平成11年7月7日、翌月8月25日には6刷になっています。とにかく異様なペース。
江藤自身が時代を代表する文芸評論家であるから、ということよりも、彼が皇后雅子妃の縁戚にあること、本作発表の約半年後に自殺したことなどがワイドショーで取り上げられこのような売り上げにつながったと思われます。
さて。
突然の妻の末期がんの発覚と看取りの日々。そして別れ。
目の前にいる人がいつかは死んでしまう、ということを強く感じさせる作品。
男性と女性で、結婚経験の有無、未婚であれば結婚願望の有無。それらの違いでも感想が分かれそうな作品ではあります。
実際に身内をなくしたこともある方(眼鏡堂書店を含む)からは、作中で亡くなった妻からの声が聞こえてくる場面が印象的であるという意見や、末期がんを当人に告知せず看病を続けるようすをこうも淡々と描けるな、という意見がありました。
逆に身内を亡くしていない方からは、まだ「死」というものを向こう側と感じていたけれど、作中で生の時間が死の時間に変わっていくところが印象的という意見をいただきました。
一方で、あまり心に刺さらず手記ではなく恋愛小説として読んだ、という意見も。それでもこうして看取られる奥さんは幸せな死を迎えた、とも。
ただそれも、江藤家が結構裕福な家庭だからこそのものである、とも。
帯の中にある「苛烈」というものを作中で感じなかった、という意見もあり、それは外向きの激しさの「苛烈」というよりは内なる葛藤についての「苛烈」では?と眼鏡堂書店は言ってみました。
多少の古めかしさのある文体ながらとても読みやすいため1~2時間で読了できる作品。とはいえ、この作品の中で生活の中に死が立ち上ってくる感触は何とも言い難いものがあります。
本作についてよく言われる「二人の間に子供がいたら何かを変えること(江藤の自殺)ができたのでは?」ですが、いても変わらなかったのでは?という点に落ち着きました。眼鏡堂書店は、奥さんが入院するにあたってペットホテルに預けた愛犬の存在が以降全く触れられていないところに、もはや江藤が妻の死以降に生きる意欲を失っているように感じました。
話題の中心になったのは、告知をする/しない問題、そして、告知をされたい/してほしくない問題。そして、この作品のような看護や看取りを自分は相手に対してできるだろうか?という問題。参加者の皆さんよりたくさんの意見やお話を頂戴し、ありがたい限り。
とくに後者に関して個人的な考えを言うとしたら、江藤のような看護や看取りはできないし、逆の立場であればしてほしくない。してほしくない、というのは拒否というよりも、相手にそれだけのことをしてもらうような価値が自分自身にはないから。
それを言ったところで参加者の方より「あなたは絶対に結婚してはいけない人だ」というお言葉を頂戴しました(笑)。大丈夫です、自分自身に人の心がないことぐらい自覚してますので(笑)。
今回、『妻と私』に近しい作品として、2作品紹介いたしました。
前者はパートナーががんに侵されそれを看取りながらも、作品が書けない苛立ちを彼にぶつけてしまい自己嫌悪に陥る日々がつづられた日記。
後者は、作者である二階堂奥歯さんの日記。ラスト部分が『妻と私』や『月蝕領崩壊』が看取る側からの視点なら、看取られる側からの視点。そして突然の別れが挟まれる作品。
ありきたりな言葉ではあるけれども、人と人の数だけ物語があり、それらの中に正解も不正解もない、だから人間は人間たり得るし、人間という存在の面白さもあるのではないでしょうか?
なかなか個人的に深々とえぐられた作品。そう何度も読み返したくなるものではありませんが(笑)、折に触れて読むべき作品です。年末年始のまとまった休みも近づいていますし、その際にページを紐解いてはいかがでしょうか?
ご参加いただいた皆様、そして会場をお貸しいただいたPlayground Cafe BOXさん、大変ありがとうございました。
さて、実は読書会当日の2日前、そして翌日も読書会に参加するという強行スケジュールのため眼鏡堂書店のインプットが空になりました(笑)。
というわけで、12月の読書会はお休みの予定です。以降開催する際は告知ページをアップしますので、そちらをお待ちください。
最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店 をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

