眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【眼鏡堂書店の本棚】スクリプトドクターのプレゼンテーション術/三宅隆太

眼鏡堂書店の蔵書より、独断と偏見に塗れた”もっと読まれてもいい本”を紹介しつつ、全力でニッチな方向へとダッシュする【眼鏡堂書店の本棚】。

今回紹介するのは、脚本家で映画監督、スクリプトドクター*1でもある三宅隆太さんの『スクリプトドクターのプレゼンテーション術』です。

内容は、三宅監督が出演したイベントをそのまま文字に起こしたもので、本書はプレゼンテーションのテクニック集ではなく、「相手に伝える・伝わる」ための本質について書かれています。

なので、テクニックとしての資料作りや映えるパワポデザインとかは一切出てきません。むしろ、プレゼンテーションとは何か?というそもそも論。

併せて、三宅監督が重視しているのが「対話」。

相手に「伝える」ことよりも、対話によって相手に「伝わる」ことを重視する。

なので少々自己啓発的な香りもしてくるのですが、それはそれ。

 

とはいえ、「伝えようとしてるんだから伝わるでしょ?」と思われる方もいるでしょうが、資料とかを準備してみたところで本質的な「伝わる」ことが抜け落ちると全く伝わらない、そんなことが最近あったので一例としてご紹介したいと思います。

 

先日、とある読書会にお邪魔してきました。

その読書会は、自分が紹介したい本を8分間の持ち時間紹介とフリートークを順番に行っていくやり方でした。

そしてその方の番が回ってきました。どんな本を紹介したかはその方が特定される可能性があるのでここでは明記しません。

ただその方はその本をほかの参加者たちに紹介したい、知ってほしい、という気持ちが強くあったようで、話したい内容をA4の用紙にびっしりと書いておられました。

そしてその方の紹介の番が回ってきました。その紹介に愕然としました。

終始、準備した資料だけを見て話し始めたのです。眼鏡堂書店を含めた他の参加者には全く見向きもしませんでした。また、本を開いて紹介する際も、目線は本。

そのうえ、用紙にまとめた内容を全部話さなければ、という意識からかずっと隙間なく話しっぱなしでした。

当人がこれを読むかもしれないので、あえて書いておこうと思います。

正直、眼鏡堂書店は「早く終わらないかな」と思いました。

 

なぜ「早く終わらないかな」と思ったのかというと、そこに対話がなかったからです。

その方の紹介が完全に一方通行で、「僕がこれだけ頑張って作った資料を全部話せば、絶対に伝わるはずだ」と本人が信じて疑わないのが、一層根深い。

資料はあれば便利なのですが、あくまでも本の紹介という「対話」の補助。

ただただ一方的に話されることのつまらなさは、多分誰しもが感じたことがあるはずです。まして、あまり興味のない分野だとなおさらです。

とにかく、その人がオーディエンスとしての眼鏡堂書店たちを全く見ていない、その存在も感じていないことがわかるだけに苦痛でした。そしてそれを当人がまったく自覚していないのも悲しくなりました。

少なくとも、その方の紹介する分野は自分にとって興味のないものではありますが、それでもなぜこの人がこの分野に興味があるのだろうか?という点での興味を向けるようにはしています。ただ、その時はそれさえも受け付けないくらいの一方通行でした。

 

こういうことがなぜ生まれるのか?

この本の章立てで書かれている、

  • プレゼンは人数に関係なく「対話」である
  • プレゼンの主役は「する側」ではなく「される側」

その方はこれの逆を「自意識」として疑っていないからでしょう。

プレゼン、というか読書会にせよビブリオバトルにせよ、眼鏡堂書店が考えていることがまさに上記の2点だったので、そういう意味では三宅監督からお墨付きをもらったような気がしました。まあ、ちゃんとできているかというと、日々反省と改善なのですが。

 

最近、読書会にお邪魔するたびにプロレス雑誌を持っていくのですが(笑)、これはたんにプロレスにドはまりしているから、だけではありません。

プロレスという非日常的でニッチな話題を、知らない、興味のない相手にどう伝えていくか?という即興的な対話のトレーニングだと思って持っていくのです。

なので、全く予期しないところから相手が興味を持ったりもしてきます。

ちなみにその時の読書会でプロレスにまったく興味のない方からの質問は「今の女子プロレスの人たちって、こんなに美人なんですか?」でした。

女子プロレスの興業の広告があったので、お見せしたところ大変に話が盛り上がりました。

知らないものを知ってほしいからこそ、ゆるい話題から相手にボールを投げてそこから対話を組み立てる。ある意味で、これも本作に書いてある自己開示なのかもしれません。他人にはニッチなものに見えるかもしれないけれど、自分にとっては大事なもの。

だからこそ、一方通行に話をするのではなく、「相手」に「知ってもらう」ためのやり方がある。それが「対話」であり「プレゼンテーション」。

 

読書会主催者として、いろいろ悩むこともあるわけですが、そのたびにこの本をぺらぺらとめくります。単純に三宅監督が大好きだからということもあるのですが、監督の優しい語り口から癒されつつも、学ぶことがたくさんあります。

あと、意外とこういう「そもそも論」としての書物はあまりないので、そういう意味でも眼鏡堂書店にとってブック・オブ・ザ・イヤーな1冊。

皆さんもお読みになってみてはいかがでしょうか?

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

*1:映画、テレビ番組、演劇等の脚本や台本を書き直したり、これらの主題、構成、テンポ、登場人物の性格づけ、台詞など特定の要素の完成度を高める目的で制作会社に雇われる脚本家、劇作家、台本作家である。(Wikipediaより引用)