眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『英霊の聲』三島由紀夫

8/17(日)に山形市のPlayground Cafe BOXにて、三島由紀夫の『英霊の聲』を課題図書とした読書会を開催いたしました。

ありがたいことに当初の6名が早々に埋まり、会場様のご厚意でさらに増席。

これまでで最多の9名での開催となりました。

英霊の聲/三島由紀夫

おりしも今年は昭和100年。

ということは昭和とともに生まれた三島由紀夫も生誕百年。

同時に戦後80年でもあり、数年ぶりに地上波で『火垂るの墓』が放送され、その前には眼鏡堂書店の読書会で課題図書にした『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら』が放送されたとのこと。そして、靖国神社への参拝者数が過去最高を記録したとか。

眼鏡堂書店としては8月は戦争ものを取り上げることをテーマとしており、この『英霊の聲』はまさにうってつけ。

同時に、眼鏡堂書店にとっての三島由紀夫は、まさに本作。あまり取りざたされる作品ではないからこそ、一人でも多くの人に読んでほしい。

そんな思いが通じたようで、うれしくもありました。

 

参加者の方からは好評だったのですが、同時に、読みやすさについてはきっぱりと二分していたのが興味深かったです。

あっという間に作品世界に引き込まれた人と、ちょっとずつしか入っていけず挫折しかけた人と。

とはいえ、美しい文章と整った作品構成は全員が認めるところ。

この辺りは、さすが三島由紀夫

 

『英霊の聲』は帰神(かむがかり)の儀式で死者の魂を呼び出す話。

前半は226事件で決起し死んでいった青年将校らの魂を。

後半は最初の『神風特別攻撃隊』で死んでいった兵士の魂を。

彼らの無念とその胸中が語られるわけですが、それらを前半後半でシンメトリックな構成にしつつ、その実対照的な天皇からの言葉で対比してみせる。

三島は戦中世代であり、学習院高等科で銀時計を賜る際に昭和天皇を間近で見たこと、徴兵検査に不合格となった列外の者であることが、本作を編んだきっかけのような気もします。さらに言えば、この4年後に三島は楯の会を結成し、陸上自衛隊市谷駐屯地にて割腹自殺します。なので思想的に最も濃厚だった時期の三島が伺えるのではないかと思い、今回は本作を課題図書にした次第。眼鏡堂書店としては『金閣寺』『仮面の告白』よりも真っ先に三島作品として浮かびます。

この翌年に自衛隊体験入隊し、書かれた作品が『葉隠入門』。その3年後が楯の会結成。ある意味、三島にとって最も幸福な数年間だったのでは?

 

参加者の方からは、主に本作における天皇の在り方についての意見がたくさんありました。それは当時の昭和天皇の神性や、天皇の存在について。また戦後の人間宣言についてなど。

天皇の神性については、宗教的な何か、というよりも仰ぎ見る憧憬的存在としての「神」ではなかろうか?という意見が出ました。

また天皇人間宣言にもかかわる敗戦を踏まえた裏切りなど。過去の戦争観に触れつつ、この裏切られた者たちへのやさしさがこの作品からは感じられる、という意見も。

ただこれには眼鏡堂書店は若干の異議を。裏切られた者が日本人であったからやさしさが向けられる、と言いました。『わが友、ヒットラー』も裏切られる者たち(シュトラッサーとレーム)がいましたが、そこに優しさがあったかというと……。

 

そして、今回の読書会で白熱したのは、最後に川崎君の顔に浮かんでいたのは、いったい誰の顔だったのか?

瀬戸内寂聴が三島に送った手紙では昭和天皇であり、三島自身も「鋭いですね」と返したそうですが……。(今回の読書会では出なかった意見ですが、三島由紀夫自身の顔という解釈もあるようです)

「眼鏡堂さんはどう思いますか?」と振られたので、私見を。

文章中に「あいまいな」とあることから、先の大戦で犠牲になった人すべてを総括した顔、と回答しました。声ではなく聲、ということから戦後の視点で戦中を総括するという意味で、おそらく三島はそのように書いたのではないでしょうか?同時に、それだけが答えではなく、人によってさまざまな回答がある、という風にしたところも、その個人によって先の戦争へのとらえ方が異なる、という風にも感じました。

 

最後に余談なのですが、帰神の儀式で死んだ川崎君。とある参加者の方から「川崎君が死んでるんですが、この後どうしたんでしょう?」という問いが。

すかさず眼鏡堂書店は答えました。

「穴掘って埋めましょう」

全員爆笑です。

この時点で、帰神の儀式をした方のビジュアルは、眼鏡堂書店の頭の中でリリーフランキーになりました。参加者の中にピエール瀧がいます。

でなかったら、でんでんでしょう。

こっちはこっちで不穏な空気が立ち込めます。

ありがとうございました。

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あと、226事件のドキュメンタリーを見ることで作品世界を理解しようとした方も。
その中で眼鏡堂書店が「製作・奥山和由、監督・五社英雄、脚本・飯干晃一の映画『226』というのがある」と言いましたが、正しくは脚本は笠原和夫でした。

ここで訂正してお詫びいたします。スミマセン。

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人数の多さもさることながら、皆さんの熱量の高さに圧倒された読書会でした。

ご満足いただけましたなら何よりです。
ご参加いただきました皆様、そして会場をお貸しいただきましたPlayground Cafe BOXさま、大変ありがとうございました。

さて、次回9月の読書会ですが、課題図書は紅玉いづきの『ミミズクと夜の王』です。

開催日、場所等は決まり次第お知らせいたします。今しばらくお待ちください。

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店 をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。