眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『好き好き大好き超愛してる』舞城王太郎

7/20(日)に、山形市のPlayground Cafe BOXさんにて舞城王太郎好き好き大好き超愛してる』を課題図書とした読書会を開催いたしました。

好き好き大好き超愛してる舞城王太郎

前回に引き続き今回も満員御礼となりました。

ご参加いただきました皆様、大変ありがとうございます。

 

今回の課題図書は舞城王太郎の『好き好き大好き超愛してる』。

参加のお一人からは「どうしても本が見つからず、書名を店員に話すのが恥ずかしかった」とありました。たしかに、ここまで直球なタイトルはそうそうありません。

また、この日は選挙の投票日。

本作のタイトルとは真逆にある強烈なヘイトが吹き荒れた選挙戦であるとともに、少し前の芥川賞直木賞が両賞ともに「該当作なし」。*1

そういう時期であればこそ、この作品をみんなで読む、ということに意味があったように考えます(自画自賛)。

 

個人的に舞城作品を読むのは約二十年ぶり。三島賞を受賞した『阿修羅ガール』をきっかけに初期作品から読んでいたのですが、『ディスコ探偵水曜日』がどうしても肌に合わず、それっきり舞城作品とは疎遠に。

とはいえ、読んだ当時もなかなか良い印象だったのですが、二十年も経つとその印象も薄れていき、今回改めて読んで「あれ?こういう話だったっけ?」。

 

大半の方が初舞城だった今回の読書会。それゆえに、舞城作品独特のテイストに戸惑われたご様子。カギカッコの会話文や地の文章が改行なしにダーッと続くところや、独特のオトマノペのチョイス、これまた独特の登場人物や作中作品へのネーミングセンスなどなど……。とはいえ、それに戸惑いながらも読みにくさはなく、むしろ文章自体は大変読みやすいと感想をいただきました。

とはいえそこは舞城作品。『阿修羅ガール』くらいの時と比べて、「愛は祈りだ。僕は祈る。」という愛と小説を書くことに恐ろしいほどストレートに綴った作品だと感じた眼鏡堂書店とは対照的に、ニオモの章でいきなりハヤカワSF的な神との闘いが登場するなど、直球どころか変化球ばっかりぼんぼん来る、という意見も。

特にこのニオモの章がほぼ全員を困惑させていて、いったい何が始まった?

確かにこの章のテイストがそれ以外とはあからさまに違っていて、確かに困惑するわな。まるでエヴァンゲリオンか、ゲームのよう。そういう下敷きというか感触がない方からは「まったくわけがわからない」。

 

それはさておき。

 

眼鏡堂書店的な解釈では、柿緒1~3が現実に進行している時間軸で、それ以外が柿緒の章での語り手である僕が書いている小説の世界。そんな風に理解していたところ。

ある参加者の方からは、「もう繋がりとか気にしないで、それぞれが別個の短編として読んだ」と。それはそれでストレスのない読み方ともいえそう。

併せてキーとなった単語が「メタ化」。

「普通はこうだけど、ここはあえてこうだよね」という俯瞰的な視点で用いられていることの指摘もあれば、眼鏡堂書店は特にニオモの章でのバリバリのロボットアニメやゲームの世界観を用いながら「あえて」純文学的な視点で批評する、というとらえ方を話しました。この世代の作家特有の、というか、この世代のメフィスト賞受賞作家特有+αによる批評性のようなものを再読したこの度感じたところ。佐藤友哉滝本竜彦清涼院流水とか(懐かしい)。

 

繰り返すようですが、ヘイトの風が吹き荒れた選挙戦の投票日にこういう作品の読書会を行えたのは大変有意義なことでした。願わくば、この愛と祈りが世の中を平静へと導きますことを。タイトルにあるポジティブな言葉、好き、とか、愛してる、とかをもっと普遍的にかつごく当たり前に口にできるようになればいいな、と個人的には思いました。ストレートなポジティブさ、大事。

あと、ほかの舞城作品をお読みいただけると、大変喜びます。

その一方で、なかなかにクセのある課題図書に、参加者の皆様を無理やり付き合わせてしまった感もなきにしもあらず。うーむ。

 

ご参加いただきました皆様、そして会場をお貸しいただきましたPlayground Cafe BOX様、大変ありがとうございました。

さて、8月の読書会ですが、生誕百年となる三島由紀夫の作品から『英霊の聲』を課題図書とします。日時場所等の詳細につきましては、決まり次第ご連絡致します。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店 をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

*1:好き好き大好き超愛してる。』『ビッチマグネット』『短篇五芒星』『美味しいシャワーヘッド』でそれぞれ第131回(2004年上半期)・第142回(2009年下半期)・第147回(2012年上半期・第148回(2012年下半期))の芥川龍之介賞候補作となっている。(Wikipediaより引用)