6/22にやまぎんホールで開催された紅花読書会に参加してきました。

課題図書は太宰治の最高傑作ともいわれる『斜陽』。
ちなみに、眼鏡堂書店は何気に初太宰。中・高ともに国語の授業で太宰作品に触れておらず、なおかつ1作品も読むことなく今日に至る。
なぜかと問われれば、単純に全く興味がわかなかったから、という一言に尽きます。
ただ、太宰と同じ「戦後無頼派」と呼ばれるカテゴリーの中の作家では一番読んだのが、坂口安吾。次に織田作之助や檀一雄。太宰の弟子を称していた田中英光の『オリンポスの果実』まで読んでいるにもかかわらず、太宰は未読。
……こうして振り返ってみると、どんだけ興味ないんだ自分、と思います。
というわけで、太宰の『斜陽』です。

あらすじは、
破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため"生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族"という言葉を生んだ太宰文学の代表作。(Amazonより抜粋)
初太宰の印象として強く感じたのは、とにかく「読みやすい」。地の文章もさることながら、会話と会話の組み合わせ。太宰はチェーホフから影響を受けているそうで、なるほどこの会話のテンポ感は確かにチェーホフ的。併せて、その会話だけを抜き取ってもだれのセリフか分かる見事さ。とても印象深く感じました。
とはいえ、ほかの参加者の方々が絶賛する「弱さに寄り添ってくる感じ」については、眼鏡堂書店は完全に拒否反応。自分の弱さを慰めてくれる存在への寛容さを抱けるほど自己肯定感がある人ならそれもまた心地よく感じるのだろうけれど、眼鏡堂書店のように自己肯定感が低いを通り越して自己拒絶に等しい人間からすると、自分の弱さに寄り添ってこようとする存在はただの敵。
なので、良い作品だし興味深く読んだけれども、好きにはなれそうにないという結論に(すみません)。
一方で太宰の圧倒的な筆致には素直に関心。上記にあげたあらすじを、表題の『斜陽』のに文字で完璧に表してみせる才能!そもそもの斜陽には沈む夕日の西日という意味しかなく、没落や衰退という意味はありません。にもかかわらず、この鮮烈なイメージ付から本来なかった意味合いまでも加味させるのは、素直にすごいなと思ったところ。
作中にたびたび登場する蛇の存在はキリスト教における罪の意識のメタファー、という指摘には大変感心しました。その罪の意識を抱えながら最終的に死を選ぶ直治、上原の子供を身ごもり愛と革命に生きようとするかず子。ただ、それも人によって見解が異なるというか、眼鏡堂書店は作中の「戦闘、開始」の文言が出てきたあたりから、かず子の認知のゆがみが決定的に現実から乖離した、ととらえていたので、直治の自殺も上原の子供を身ごもったこともすべて認知がゆがんだかず子の妄想にすぎない、と解釈していました。なのでそれらを現実に起きたことであるととらえている感想はすごく新鮮でした。……たぶん、その感想の方がごく自然な気がします。
なんで妄想と思ったかというと、最初の手紙のあたりからそこはかとなく『ブラックスワン』な香りがぷんぷんしてきたからさ……。
宗教も革命も愛もすべて信じるもの。(これは読書会で参加者の方が指摘したもの。読んでいた時はそこまで拾えなかった)
信じるものが深まれば深まるほど盲目になり、見えるものと見たいものとの間に乖離が生まれ、信じるもの、が、信じたいもの、に変幻した時決定的な現実との乖離(ブラックスワン的世界)が生まれるから。
よくある物語構造といえばそう。でもそれをことさら強調するでもなく、どちらともとれる筆致で描いて読者に判断をゆだねるのはやっぱ力量。
いや~、太宰すげえな。
とかいいつつ、本作には元ネタが。
こういうところが、「オイ、太宰いい加減にしろ」(笑)
今回の読書会で、眼鏡堂書店からの質問として「次に読む太宰は?」
皆様からの答えは、『人間失格』
初太宰は大変興味深い読書体験となりました。
紅花読書会さま、参加者の皆様、大変ありがとうございました。
次回7月は、山形市にて開催いたします。
日時は7/20(日)14:00~16:00
場所は、Playground Cafe BOX
課題図書は、舞城王太郎『好き好き大好き超愛してる』
募集についてはイベントページをアップしますので、しばしお待ちください。
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