眼鏡堂書店

山形県東根市を中心に、一冊の本をみんなで読む課題図書形式の読書会を開催しています。 また、眼鏡堂店主による”もっと読まれてもよい本”をブログにて紹介しています。

【開催しました】眼鏡堂書店の読書会『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』汐見夏衛

6/15(日)に、東根市のコーヒー屋おおもりを会場に、汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の読書会を開催しました。

2月の開催以来2か月お休みしておりましたが、やっと再開。そのうえ課題図書がいわゆる”キラキラ小説”(ケータイ小説ともいう)!どうなることかと思いましたが、ふたを開ければ満員御礼!皆様大変ありがとうございます。

しかも、初参加の方が2名!こちらもまた、大変ありがとうございます。

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。/汐見夏衛

”タイムスリップ女子高生が特攻隊員と恋に落ちる”というかなりハイコンセプトな作品であり、ケータイ小説が戦争というこれまたかなりセンシティブな題材をどう扱っているのか?という点が眼鏡堂書店に課題図書としての選択を迫らせました。

往時のケータイ小説は、作品として完成度それ自体にかなり難があるものがあり、本作もその類ではなかろうか?という危惧があり、課題図書の発表段階で「正気ですか?」と言われたわけですが、大丈夫です。履いてますよ正気です。

思った以上にちゃんとした作品であると同時に、題材が題材であるがゆえに、(思想的に)右に振りすぎると石原慎太郎が脚本を書いて長渕剛が主題歌を歌うハメになり、かといって左に振りすぎると戦争の悲惨さを前面に打ち出すがあまりスプラッタホラーめいてしまうということになりかねません。その意味では、なかなかうまい位置に着地したのではないかと思います。

眼鏡堂書店でも、過去に特攻を扱った作品で読書会を開催しております。余談ですが、そちらの模様もどうぞ。

glassesbookstore.hatenablog.jp

 

さて。

 

キラキラ満載のケータイ小説、という先入観から身構えた人が多かったわけですが、出てくる感想としては「おもったよりも良かった」「ラストに泣かされた」。

映画を見た方からもとても良い作品で号泣したとの感想を。(ちなみに、原作では中学生の主人公が、映画では高校生という設定とのこと。そりゃそうだ)

個人的に驚いた発見は、参加者の方からの「特攻隊好き」。映画で言えば『永遠の0』や『君を忘れない』などの特攻隊モチーフの作品を愛好されていた、と。

やはり、今回の読書会を開催したのは正解だったな、と。

眼鏡堂書店の学びが広がりました。

 

おおむね高評価である反面、言いたいことがないわけではない。

眼鏡堂書店としては、軍隊内部の生活(内務班)が全く描かれておらず、いくら主人公の百合ちゃんが彰さんに会いに行けない(基地に入れない)から仕方ないとはいえ、彰さんがホイホイ百合ちゃんのところにやってくる構造に、「そんなに簡単に外出できないからね!」と。多分この作品の基地内での生活、新日本プロレスの練習生の方がはるかに過酷な気がします。こっちは外出禁止だぞ!

そんな感じで基地の警備がガバガバなので、出撃3日前に脱走者を出しても、前日に外出可能という(笑)。物語の展開を最優先にすればそうなるのも仕方ないとはいえ、常識的に考えてこれはちょっとねえ……。あと、脱走は重罪なのとそう簡単に逃げ切れないので、という部分も加味。

そして、全員の共通認識としては、とにかくタイムスリップという設定を持てあます(笑)。

なぜタイムスリップしたのか?なぜまた現代に戻れたのか?という問いに関する答えは一切なし!この強引さを不誠実ととるか、作品の勢いととるかで判断が分かれそう。このいきなりガッとくる感じは、眼鏡堂書店含む何人かが感じたもの。ちなみにこのガッとくる感じが苦手で、眼鏡堂書店は購入後本作を三日寝かせました。

他にも、物語の展開&構造上仕方ないとはいえ「それはどうなんだ?」という場面も。

個人的に気になるのは、彰さんの戦う理由。口にするそれらの言葉が場面によって違うというか、百合ちゃんとの出会いで揺れる心情、というよりもとにかくはっきりしない。そのあたりは作者がこのキャラクターの精神的支柱の部分で悩んでいるように感じました。まあ、戦争を知らない我々世代が知る由もない部分ではあるにせよ。

 

それはさておき。

 

なんだかんだ言いつつ、全員が一致する見解としては、ラストは圧巻。

泣いた、という感想も頷けます。

眼鏡堂書店は泣きはしませんでしたが、あのラストなら10万点をポンと積み上げても後悔はありません。そのくらいに、近年ではちょっと見ないくらいに心に来るラストでした。

今回の読書会で新鮮だったのが、割とケータイ小説が読まれていた、ということ。

そしてその当時の作品と比べて、恋愛の描写が割に落ち着いている、ということ。

昔のケータイ小説であれば、彰さんが百合ちゃんに対してもっとガッといったはずですが、本作での彰さんは誠実な男だったので安心しました。なんというか、その辺の落ち着き方も、現代的な印象を個人的に感じたところ。

”特攻隊員との恋愛”がタイムスリップと同じくらい際立ったものとして参加者の方々は感じておられたようでしたが、眼鏡堂書店はむしろ逆。

『あの花』の次に読ませたい(オススメしたい)一冊、ということで眼鏡堂書店が持ってきたのは、コチラ。

うがった見方ですが、汐見夏衛さんが鹿児島出身で高校の国語の先生だったという略歴から、絶対に知っている・読んでいると思って、コチラを。

島尾敏雄・大平ミホ(のちの島尾ミホ)の恋愛が描かれるのですが、島尾敏雄は特攻隊員。そしてその出撃日が8/15。詳しくはお読みになっていただきたいので、このくらいでやめておきますが、『あの花』がフィクションならこちらは実話。そして、この二人の物語はここで終わらない……。

 

話を『あの花』に戻します。

言いたいことは数あれど、例えば『ちいちゃんのかげおくり』や『ガラスのうさぎ』といった低学年向けの戦争童話から、大岡昇平『野火』や野坂昭如火垂るの墓』はけっこう間が空いていて、その間に収まる作品というとちょっと思い浮かびません。

まして、女子中高生が読める(読みたくなる)ものというとさらに思い浮かびません。

「忘却されるよりはたとえどんな形であれ語られる方がよい」とは誰の言葉か忘れましたが、戦後80年に至ろうという今、こういう形であれ、先の戦争がこれからの世代に語られるのは、少なくとも忘却されるよりははるかに良いことではなかろうか?と個人的には思います。

 

なので、続編と近作を贖いました。

汐見夏衛★激推しの眼鏡堂書店

あと、こういったキラキラ小説は評論家や読書家の皆さんには黙殺されるか冷笑されるかするシロモノですが、個人的に非常に学びが多い作品でした。

眼鏡堂書店のような中年には、このキラキラが必要なのです!

ちなみに、この現象を「中年男性の心の保湿」と表現したら笑われました。

保湿、大事。

 

というわけで、ご参加いただきました皆様、そして会場をお貸しいただいたコーヒー屋おおもりのマスター&ママさん&はるなちゃん、大変ありがとうございました。

 

次回7月は、山形市にて開催いたします。

日時は7/20(日)14:00~16:00

場所は、Playground Cafe BOX

課題図書は、舞城王太郎好き好き大好き超愛してる

募集についてはイベントページをアップしますので、しばしお待ちください。

 

最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店 をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。