9月15日(日)さくらんぼ東根駅前のコーヒー屋おおもりにて、中島らもの『今夜、すべてのバーで』を課題図書とした読書会を開催しました。

おりしもこの日は、山形県が誇る大イベント『日本一の芋煮会フェスティバル』の開催日。巨大鍋&大型重機で芋煮を作る光景は、県外の方が見れば「頭がおかしい」と形容するほかないでしょう。
大丈夫です。山形県民の眼鏡堂書店も、あの光景には「頭がおかしい」という表現以外浮かんできません。


そんな頭のおかしい山形県の一角より、今回の読書会の模様をレポートしていきたいと思います。
さて。
中島らもが亡くなったのが2004年なので、もう20年も時間がたったわけですが、この非常にユニークな才能をもっとたくさんの人に知ってもらいたい!というわけで、今回の課題図書にチョイスした次第。
ご参加いただいた方の中には、初めて読んだという方もおり、「読みやすいだけでなく、全く古びていない作品」という感想をいただきました。
主催者の眼鏡堂書店としては、過去イチ苦戦した課題図書。
内容が云々ということではなく、みんなで話したいことがすべて巻末にある町田康の解説で書かれてしまい、「どうすりゃいいんだ?」とアワアワしました。
…そんな町田さんも、今はお酒やめちゃったしなあ。
それはさておき。
主人公=中島らも、という視点で進む”アルコール依存症小説”。
執筆は30年ほど前にもかかわらず、前述の感想にもあったように全く古びておらず、むしろ時代が追いついたような感さえあります。(アルコール依存症、という呼び方にしても、当時の感覚ならアルコール中毒(アル中)と表現する方が普通では?との指摘も)
もっとも、時代性を感じるものが皆無か?というとそういうわけでもなく、これが書かれた90年代当時は、まだ病院内に喫煙室があり煙草が普通に吸えた、ことに今日的な視点での驚きがありました。
関西風の「オチ」をつけるスタイルが、アルコール依存症という深刻なテーマを扱いながらも、カジュアルだけど深刻、明るくもあり悲しくもあり、いう印象を挙げていただきました。眼鏡堂書店も同意見で、この独特なユーモアセンスが、本作を美談だけで終わらせない、悲劇だけで終わらせない作品にしていると思いました。
また別の方からは、本作の主人公が自分を”特別な人間”であると思っている自意識についての指摘も。この自意識からくるナイーブさが、彼を一層アルコールへと向かわせたのではないか?とも。
この、なぜ依存症になるのか?については、それが手段になるから。
楽しく酒を飲む、という目的が、酒を飲んで楽しくなる、という手段に置き換わったときに、依存症という落とし穴にはまり込んでしまう。
そんな中で印象に残った文章が、
「教養」のない人間には酒を飲むくらいしか残されていない。
ここで言う「教養」とは知的な意味というよりも、一人で時間をつぶすための技術のことを指します。人生という膨大な時間を、酒に寄りかからず時間をつぶす。そのためには「教養」が必要になる。
作中で引用される「アル中地獄」の悲しさとおかしさの同居は、個人的に吾妻ひでおの『アル中病棟』を思い浮かべました。
改めて本作を読んで感じたのは、らもさんのやさしさ。
脱落者であることの自覚と強さからくる、寄り添うやさしさ。
かつてであれば、色川武大が。
そして20年ほど前であれば、らもさんが。
では今は?
先ごろ亡くなられた西村賢太が近いような気もしますが、彼は落伍者かもしれないけれど他人に寄り添うやさしさがあるかと問われると「ないね」と言わざるを得ないのが厳しいところ。
今日の世相が世相であるだけに、色川さんやらもさんにつながるラインの作家が一層必要になっているように思われました。
それにしても、まだまだ早すぎるよ。亡くなるのが。
最後に、主催者の眼鏡堂書店に非常に刺さった文章を引用して終わろうと思います。
「みじめな状態でいるよりは、意識を失っていたほうがマシだからね」
次回10月の読書会は、初のテーマ選書『地元を舞台にした本&地元について書かれた本』。
郷土史や民話はもちろん、地元を舞台とした小説、地元出身者が書いた本などなど、今回の読書会のテーマに沿ったものならジャンル不問です。自分の地元ドンピシャでなくとも、紹介したい地域のものであればOKです。
ただし、上限は『山形県』にしようと思います。(県外からのご参加の方はご相談ください)グローカルならぬ”グッド👍ローカル”を目指す読書会です!(大丈夫なのか?この企画は?)
なお、このテーマ選書については、図書館や公民館などのフル活用を推奨します!
郷土史の書籍が家にある、という人の方が今は少数派のような気がしますので。
では、日時場所についてのご紹介です。
日時 10月20日(日) 14:00~16:00
場所 コーヒー屋おおもり
定員 6名(※主催者含めた2名を最少開催人数とし、満たなかった場合は中止とさせていただきます)
というわけで、皆様のご参加をお待ちしております。
最後に、内容の感想やリクエスト、記事を見て本を読みました、読み返しましたなどありましたらコメント欄に書き込んでいただけるとありがたいです。あと、もし気に入っていただけたなら、読者になっていただいたり、ツイッターのフォローや、#眼鏡堂書店をつけて記事を拡散してもらえると喜びます。以上、眼鏡堂書店でした。

